おおむね農夫、時に木こり。「山あれば山を観る 雨の日は雨を聴く 春夏秋冬 あしたもよろし ゆうべもよろし」(山頭火)。こんな生活のあれこれを綴ります。
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猫に餌をやるということ
老い㊤

追加若いころだったら、何も思わずに読み飛ばしいたに違いない文章に、ふと目がとまり、繰り返し読むことがある。
乙川優三郎の時代小説『霧の橋』(講談社文庫)にも、そんなくだりがあった。

武士を捨てて商人になった主人公の紅屋惣兵衛に年長の同業者、松葉屋三右衛門が、こう話しかける。
少し長いが、勝手に端折るのは作者に失礼だから、そのまま引用する。

「家に猫がいましてね、一度晩酌のときに鱈(たら)の皮をやったのが癖になり、日が暮れるとわたしの膝元へすり寄って来るんです、これがけっこうかわいいものでして、いまでは毎晩欠かさず酒に付き合ってもらっています、もっとも今夜は女房が相手ですから、どうしているか……」
三右衛門は銚子を持ったまま、ふふと低い声で笑った。
「ときどきふと思うことがあります、もしかしたら、いまのわたしは猫に餌をやるために生きているんじゃないかと……まあ、それでもいいんじゃないかとね、分かりますか、そんな気持ち?」
「はあ……」
「若いころは商いに夢中で、それが生き甲斐でした、しかし、そろそろ死ぬときのことも考えるようになって、歩いてきた道を振り返ってみると、わたしがしてきたことは間違いじゃないが、それ以上のものでもないと思いました、それだけ生きることに、いや、金儲けに夢中で、それこそ猫に餌をやることなど考えもせずに生きてきたのです」


 我が家にも猫2匹と犬1匹がいましてね、いつもペットショップの猫餌、犬餌では味気なかろうと、時折、豆鯵や脂肪分の少ない肉の湯引きなどを食べさせています。
だから、空腹になると猫も犬も、こんな目でじっと私を見るのですよ(写真㊤)。

 私も若いころは、犬や猫に餌をやって老後を過ごすなんて夢想だにしなかった。
自分なりにベストを尽くしたつもりだが、思い出せばうなだれるしかない悔いも多い。

「そろそろ死ぬときのことを考えるようになって」何を考えるか、何をするか、それこそ千差万別、人それぞれだ。
三右衛門のように猫に餌をやって安らぐ晩年を過ごすのも、アリだろう。

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2013.09.08 Sun 14:51:03 | | 6 comments
コメント
この記事へのコメント
いにしえの新発田
山寺の和上さん こんにちは。
返信が遅れて御免なさい。

 『霧の玉垣』は未読です。
乙川氏は吉川英治や柴田錬三郎ではなく
山本周五郎、藤沢周平の流れにいるように
見えますが、数冊しか読んでいないので、
よく分かりません。

 『――玉垣』を読んで、いにしえの新発田を
思い浮かべてみましょう。
2013.12.16 Mon 16:39:34 | URL | 沢太郎 #fZUo1r6Y[ 編集]
『露の玉垣』(乙川著)は我が郷がテーマ
◎新潮社・2007年刊行。越後の新発田
藩政史料を下敷きにした小説。ほとんど史
実に近いプロットだが、文学作品として昇
華した手腕は秀悦。
◎ご本人は多忙なので来れなかったが、新
発田ではこの小説の出版を契機に藩政史
料と「-玉垣」を照合する「古文書勉強会」
も数日ついやして開かれた。
◎当藩は秀吉が設置した10万石(最初は
7万石)程度の小藩だが、外様ながら用心
深く幕府に応接したので改易なしに経緯。
月番日記(政務の日誌)が徳川時代をほと
んど網羅しているので研究者、作家の図
書館への来訪は多い。お固いPRになった
が、暖かくなったらおいでなされ!

2013.12.12 Thu 20:32:31 | URL | 山寺の和上 #-[ 編集]
甘ちゃんです
kinnsann さん おはようございます。

 真剣な目というのは
こんな眼差しのことでしょうか。
ついつい甘くなって、彼らの言いなりに
餌をやってしまいます。
2013.09.09 Mon 11:38:27 | URL | 沢太郎 #fZUo1r6Y[ 編集]
いいことを聞きました
うえおさん おはようございます。

 時間が来るとチャイムが鳴る給餌機は
知りませんでした。
チャイムを合図に、まっしぐらに餌に駆けつける
猫は想像するだけでも楽しいですね。 
2013.09.09 Mon 11:27:59 | URL | 沢太郎 #fZUo1r6Y[ 編集]
なんとも可愛い
 この四つの瞳、沢山の期待と疑問と「やったかな?」、喜びを語っているような気がします。
2013.09.08 Sun 21:24:40 | URL | kinnsann #-[ 編集]
猫まっしぐら
餌目当てと分かっていても猫のおねだりスリスリにはやられてしまいます。今は急なお出かけ用に買った自動餌やり器でキャットフードを給餌してますが、時間になると鳴るチャイムでまっしぐらに駆け出す様子も可愛くてたまりません。人間も子供の時は猫と同じようだった気がしますが、年を取ってそんな無邪気さを失うと、かえって愛おしく感じるのかもしれません。
2013.09.08 Sun 18:21:12 | URL | うえお #s.Y3apRk[ 編集]
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